屋久島の特産〜ポンカン〜
こんにちわ。ブログ担当の廣瀬です。
屋久島も、冬を感じる日も増えて来ました。
しかし、そこは亜熱帯の島。
日中に日が差せば、20℃近くまで上がるので、朝晩の冷え込みとの寒暖の差で体調を崩さないようにしなければいけない時期です。毎朝着るものに悩みます。
この時期、屋久島ではお歳暮に間に合うよう収穫される、ポンカンのシーズンに入ります。
実は、今年からはもっと、屋久島の特産や果鈴で扱っている果物についてご紹介をしていこうと思っていました。
そこで丁度旬ということもあり、やくしま果鈴もお世話になっている麦生集落にある「市橋農園」さんにポンカンの取材に行ってきました。
屋久島のポンカン栽培のはじまり
屋久島のポンカン栽培の始まりは、大正13年(1924年)に黒葛原兼成翁が、ポンカンの苗を200本植樹したことからだと言われています。
その時の下屋久村長である黒葛原兼成翁が屋久島の農業振興のために、台湾からポンカンの苗木を取り寄せたわけですが、当時は理解されず大変苦労されたのだとか。
その後、日本で初めてポンカン栽培を成功させ、屋久島にポンカンを根付かせたのです。
現存するポンカンでは、屋久島の原木(約10本残っている)が日本で一番古いと言われています。
毎年ポンカンシーズンになると、黒葛原兼成翁の偉業を忘れないために町や農協、生産者の方が平内集落にある黒葛原兼成翁の墓前に、無事に収穫できることへの感謝の祈りを捧げています。
ポンカンのお歳暮戦線〜昔と今〜
3代続く専業農家の市橋農園さんは、初代のおじいちゃんが手作業で開墾し、有機質の堆肥や肥料が50年以上も施されたみかん山でポンカンやタンカンを育てています。
丁度出荷作業の休憩中に、二代目のお父さんとお母さん、そして三代目息子の大輔さんにお話を聞けることになりました。
まず最初に市橋さんのポンカンを食べさせてもらいました。
「あまい!これ本当にポンカンですか?」
お母さんが、「うちのポンカン食べたら皆びっくりするのよ。」と笑いながら言いました。
ポンカンと言うと、皮が分厚くて優しい甘さ、そしてちょっとカスカスしているイメージでした。
ところが市橋さんのポンカンは、甘酸っぱくてジュージーなみかんでした。
屋久島に移住してきて10年経ちますが、今まで食べてきたポンカンは何だったのか。
お父さん:昭和40年頃、屋久島にタンカンが入ってきた時は、畑の割合が[ポンカン8:タンカン2]だったなぁ。
あの頃は、鹿児島のお歳暮で乾物じゃなく生物(なまもの)と言えばポンカンしかなくて高く売れたんだ。
だから、皆お歳暮に間に合うように早めに収穫して色付けしてたんだよ。
もちろん樹で熟成させたほうが美味しいけど、年をまたいだポンカンは値段がガクンと落ちるから
ポンカンをメインで出荷してた時は急いだもんだよな。
ポンカンは、色づき具合の5分〜7分で収穫して、それから倉庫等で4日間ほど色付け・追熟をさせます。
それから「スアガリ」(中身がスカスカのポンカン)かどうかを手作業で仕分けします。農協など大きい会社には、センサーで「スアガリ」かどうかを調べる機械がありますが、市橋農園では一つひとつ手にとって分けていきます。コツを聞いてみると、
大輔さん:重さも判断の一つだけど、一番は触った時の感覚かな。年によっても違うけど3分の1くらいがスアガリの時もある。
今年はスアガリの心配がなくて良い年だよ。
お父さんが一つ一つ手にとって、スアガリか調べています。スアガリのポンカンは、畑に戻し肥料として循環させます。
お母さん:今はハウスのフルーツやハムや真空パックで色んなものが出てるから、お歳暮の選択肢がとっても多くなってきてね。
でも一番のポンカンのライバルは鹿児島の「大将季(ダイマサキ)※」よ。
あれが出てきてからポンカンが昔ほど高く売れなくなってきたの。
※「大将季」は不知火(シラヌイ:デコポンも不知火の一種)の枝変わりで鹿児島で栽培されています。
表皮や果肉もデコポンより少し赤みがかっていて殆ど種が無い柑橘です。
お父さん:それでも平成8年頃まではポンカンを頑張って作ってたな。
でもそれ以降は、2月中旬に出荷するタンカンの方が味が濃くて美味しいっていうので、ポンカンよりも高く売れるようになってきたんんだ。
だから畑の割合が今では「タンカン9:ポンカン1」になったんだよ。
お母さん:それにタンカンはポンカンほど手がかからないしね。
お歳暮に間に合わせなくてもいいから、色づきが5分7分で採らなくてもいいでしょ?
これもどのくらいの実が5分だとか素人さんにはわからないからね。
収穫やスアガリの仕分けだったり、ポンカンは人に任せられない作業が多いのよ。
そのてん、タンカンは樹で熟成させるから、色付けに時間もかからないし、バイトの人に収穫を手伝ってもらえるしね。
ポンカンの種類「腰高」と「扁平」
山なりのポンカンは、大きいものや小さいものもあり、一つ一つ形が違います。
お父さん:そう言えば、ポンカンに「腰高(こしだか)」と「扁平(へんぺい)」の2種類あることは知っているかい?
大輔さん:形が縦長か平べったいかの違いで、食べ比べればわかるよ。
もちろん知らないので、いざ食べ比べて見ると、「すごい!全然味が違いますね。私は扁平の方が好きです。」
大輔さんが「それがわかれば大したもんだ。みかんを食べる時、こっそり扁平を選ぶのが通だね。」と教えてくれました。
「話を聞いてるだけじゃあ、わかんないことも多いから食べて見るのが一番よ。廣瀬さん今日沢山食べたからポンカンにだいぶと詳しくなったはずよ。次はタンカンが待ってるから、また遊びにいらっしゃい。」とお母さんが最後まで笑わせてくれました。
デコポンやタンカンのルーツでもある偉大なポンカン
市橋農園さんと同じように、現在屋久島ではポンカンよりタンカンを多く作っているみかん農家さんは多いです。
ただ、先程話しにも出てきた、人気のある柑橘の「デコポン」や「タンカン」、そして他にも様々な柑橘のルーツになっていることはあまり知られていないと思います。
「デコポン」は、「清見タンゴール ✕ ポンカン」の掛け合わせですし、「タンカン」は、「ネーブルオレンジ ✕ ポンカン」の自然交配種だと言われています。
少し種が多くて、スアガリの確率が他の柑橘に比べると多いかもしれませんが、見方を変えると偉大な父としてのポンカンの違う側面が見えてきます。
やくしま果鈴のポンカンを使ったスムージー
旬のポンカンを食べられるのは、11月下旬〜2月初旬の短い間(年によってもっと短い時もあります)だけです。
果鈴では、この市橋農園さんのポンカンを工房で加工し、旬の美味しさを閉じ込めます。
そして、「ポンカン&スターフルーツスムージー(通称:ポンスタ)」、「ミックス(ポンカン、島バナナ、グァバ)スムージー」として提供しています。
旬以外でもポンカンや他のフルーツを味わうことができますので、屋久島に来られた際には是非立ち寄って見てくださいね。
やくしま果鈴は、市橋農園さんのような、沢山の農家の方に支えられています。
これからも宜しくお願いします。
そして市橋農園の皆さん、休憩中だけでなく、お仕事中にもお話を聞かせて下さりありがとうございました。
取材だということを忘れるくらい私自身とても楽しかったので、また遊びに行かせて頂こうと思います。
次のタンカンも楽しみです。